デザインシステムとは?初心者向け完全ガイドと導入のメリット
デザインシステムは、組織全体で一貫したユーザーインターフェイス(UI)を効率的に作成・維持するための包括的なフレームワークです。
Wantedlyの事例を通じて、デザインシステムの重要性と実践的な側面を探ってみましょう。
デザインシステムの構成要素
- グラフィックスタンダード グラフィックスタンダードは、デザインシステムの中でも抽象度の高い要素です。
これには組織の価値観、原則、ビジュアルガイドラインが含まれます。企業のブランディングや価値観を反映し、UI以外のビジュアル表現(例:コーポレートウェブサイト)にも適用されます。 - UIデザインシステム UIデザインシステムは、具体的なデザイン要素を定義します。
これには以下が含まれます:
a) ファウンデーション(デザイントークン):色、タイポグラフィ、スペーシング、シェイプなどの基本的なデザイン要素を定義します。
例えば、Wantedlyではシェイプに関して「R0」「R2」「R100」といった具体的な数値を用いて角の丸みを定義しています。
b) コンポーネント:ファウンデーションを組み合わせて作られる、ボタンやテキストフィールドなどの再利用可能なUI要素です。
- 実装 デザインシステムの定義に基づいて作成されるコード、Figmaのコンポーネントライブラリなどがこれにあたります。
デザイナーやエンジニアが各プラットフォーム上で直接利用するものです。
デザインシステムの重要性
- 一貫性の確保 デザインシステムを導入することで、組織全体で一貫したUIデザインを実現できます。
これにより、ユーザー体験の向上やブランドの認知度向上につながります。 - 効率化 再利用可能なコンポーネントやデザインルールを定義することで、新しい機能やページの開発が迅速化されます。
また、デザインの変更や更新も容易になります。 - コミュニケーションの円滑化 デザイナーとエンジニアの間で共通言語を持つことができます。
これにより、チーム間のコミュニケーションが改善され、プロジェクトの進行がスムーズになります。 - 品質の向上 事前に定義されたルールやコンポーネントを使用することで、デザインの質が安定し、エラーや不整合を減らすことができます。
Wantedlyのデザインシステム実践例
- コンポーネントの構造化 Wantedlyでは、UIコンポーネントを複数のデザインパラメータの組み合わせとして定義しています。
例えば、ボタンは以下の要素で構成されています:
- シェイプ(形状)
- バックグラウンドカラー(背景色)
- エレベーション(高さ、影)
- リアクション(インタラクション時の挙動)
これらのパラメータを組み合わせることで、様々な種類のボタン(プライマリーボタン、セカンダリーボタンなど)を作成できます。
- 再利用可能なルール ボタンだけでなく、テキストフィールドなど他のコンポーネントも同様の構造で定義されています。
この一貫したアプローチにより、新しいコンポーネントの作成や既存コンポーネントの修正が容易になります。 - 振る舞いの標準化 インタラクション(例:ボタンのホバー効果)も標準化されています。
これにより、デザイナーやエンジニアが個別に挙動を定義する必要がなく、一貫した体験を提供できます。 - iOS実装への展開 Wantedlyでは、デザインシステムのルールをiOSプラットフォームに適用するためのUIフレームワークライブラリの開発を開始しています。
これにより、デザインシステムの概念をコードレベルで実現し、アプリ開発の効率化と品質向上を図っています。
デザインシステム実装のベストプラクティス
- 用語の統一 デザインシステムで使用される用語を変更せずに実装に反映することが重要です。
これにより、デザイナーとエンジニア間のコミュニケーションがスムーズになります。 - 抽象化と簡素化 複雑な振る舞いや状態変化(例:ボタンのリアクション)を、シンプルな関数やプロパティとして提供します。
これにより、開発者は詳細な実装を理解せずともコンポーネントを正しく使用できます。 - イレギュラーの防止 デザインシステムのルールに反する実装を防ぐため、型システムや制約を活用します。
これにより、意図しない使用方法や非推奨の組み合わせを防ぐことができます。 - 柔軟性の確保 デザインシステムは厳格すぎると創造性を阻害する可能性があります。
必要に応じてカスタマイズや拡張ができるよう、適度な柔軟性を持たせることが重要です。 - 継続的な改善 デザインシステムは静的なものではありません。
ユーザーニーズや技術の進化に合わせて、定期的に見直しと更新を行うことが必要です。
まとめ
デザインシステムは、単なるスタイルガイドやコンポーネントライブラリではありません。
それは組織の価値観やブランドアイデンティティを反映し、デザインとエンジニアリングを橋渡しする包括的なフレームワークです。
適切に実装されたデザインシステムは、製品開発の効率化、品質向上、一貫したユーザー体験の提供に大きく貢献します。
Wantedlyの事例が示すように、デザインシステムの導入は段階的に行うことができます。
まずは基本的なデザイン要素とコンポーネントを定義し、徐々に複雑な要素や実装へと拡張していくアプローチが効果的です。
また、デザイナーとエンジニアが緊密に協力し、共通の言語と理解を築くことが成功の鍵となります。
今後、デザインシステムはさらに進化し、AIやオートメーションとの統合、より高度なカスタマイズ機能の提供など、新たな可能性が開かれていくでしょう。
組織の規模や性質に関わらず、デザインシステムの採用を検討することで、より効率的で一貫性のあるプロダクト開発プロセスを実現できるはずです。