アクセシビリティ規格「WCAG」とは?基準と対応方法を解説

Webサイトを制作・運用していて「アクセシビリティ対応が必要」と言われたものの、何から始めればいいのか分からない。
そんな悩みを抱えていませんか?
実際に、2024年の日本国内の調査では、企業サイトの約70%がアクセシビリティの基本要件を満たしていないという報告があります。
しかし、2024年6月に施行された障害者差別解消法の改正により、民間事業者にも合理的配慮の提供が義務化され、Webアクセシビリティへの関心が急速に高まっています。
この記事では、Webアクセシビリティの国際標準である「WCAG」について、基礎知識から具体的な対応方法まで、初心者にも分かりやすく解説します。
WCAGとは?Webアクセシビリティの国際標準
WCAG(Web Content Accessibility Guidelines:ウェブコンテンツアクセシビリティガイドライン)は、W3C(World Wide Web Consortium)が策定したWebアクセシビリティに関する国際標準です。
現在の最新版はWCAG 2.1で、障害のある方を含むすべての人がWebコンテンツを利用できるようにするための技術的な指針を提供しています。
日本では「JIS X 8341-3」として日本工業規格にも採用されており、公的機関のWebサイトでは対応が義務化されています。
WCAG 2.1の4つの基本原則
WCAGは以下の4つの原則に基づいて構成されています:
1. 知覚可能(Perceivable)
情報やUI要素を、ユーザーが知覚できる方法で提示する必要があります。
具体例:
- 画像に適切な代替テキストを設定
- 動画に字幕や音声解説を提供
- 十分なコントラスト比の確保(4.5:1以上)
2. 操作可能(Operable)
UI要素や操作方法が、ユーザーにとって操作可能である必要があります。
具体例:
- キーボードのみでの操作が可能
- 自動再生される動画に停止ボタンを設置
- フォーカス順序の適切な設定
3. 理解可能(Understandable)
情報やUI操作が、ユーザーにとって理解可能である必要があります。
具体例:
- 分かりやすい見出し構造の実装
- エラーメッセージの明確な表示
- 予期しない変化の回避
4. 堅牢(Robust)
様々な支援技術で確実に解釈できる堅牢性が必要です。
具体例:
- 適切なHTMLマークアップの使用
- スクリーンリーダーとの互換性確保
WCAG適合レベルの理解
WCAGには3つの適合レベルが設定されています:
レベル | 基準 | 対象となる組織 |
A | 最低限の基準 | 基本的な対応を始めたい企業 |
AA | 標準的な基準 | 多くの公的機関や企業が目標とするレベル |
AAA | 最高レベル | 高度な専門性が必要な一部組織 |
一般的には「レベルAA」への適合を目標とする組織が多く、これにより幅広いユーザーがWebサイトを利用できるようになります。

WordPress制作におけるWCAG対応の実践ステップ
ステップ1:現状分析と計画策定
まず、現在のWebサイトのアクセシビリティレベルを把握しましょう。
チェック項目:
- 画像の代替テキストの設定状況
- 色のコントラスト比の測定
- キーボード操作での確認
- HTML構造の適切性
ステップ2:WordPressテーマとプラグインの選定
アクセシビリティに配慮したテーマやプラグインを選択することが重要です。
推奨要素:
- セマンティックHTMLの適切な使用
- ARIA属性への対応
- キーボードナビゲーション対応
- スクリーンリーダー対応
ステップ3:コンテンツ制作ガイドラインの策定
継続的なアクセシビリティ対応のため、コンテンツ制作時のルールを明確化します。
ガイドライン例:
- 見出しタグ(h1〜h6)の階層的使用
- リンクテキストの具体的記述
- 表組みでのth要素の適切な使用
- フォーム項目のラベル設定
ステップ4:定期的な検証とメンテナンス
アクセシビリティは一度対応して終わりではありません。
定期的な検証とアップデートが必要です。
企業がWCAG対応に取り組むメリット
1. 法的リスクの軽減
障害者差別解消法の改正により、合理的配慮の提供が義務化されました。
WCAG対応により、法的リスクを軽減できます。
2. ユーザビリティの向上
アクセシビリティ対応は、すべてのユーザーにとって使いやすいWebサイトにつながります。
これにより、離脱率の改善やコンバージョン率の向上が期待できます。
3. SEO効果の向上
適切なHTML構造や見出しタグの使用は、検索エンジンにとっても理解しやすいサイト構造となり、SEO効果の向上にもつながります。
専門会社に依頼する際のポイント
WCAG対応は専門的な知識が必要なため、Web制作会社への依頼を検討する企業も多いでしょう。
依頼時のポイントをまとめました:
選定基準:
- WCAG対応の実績と事例の確認
- 継続的なサポート体制の有無
- コンテンツ更新時のガイドライン提供
- 定期的な検証・メンテナンス対応
コスト目安:既存サイトの改修の場合、サイト規模により50万円〜200万円程度が相場となっています。
新規制作時から対応する場合は、追加費用を20〜30%程度見込んでおくとよいでしょう。

まとめと次のアクション
WCAG対応は、多様なユーザーにとって使いやすいWebサイトを実現する重要な取り組みです。
法的義務への対応だけでなく、ユーザビリティ向上やSEO効果など、多くのメリットがあります。
まずは現状のアクセシビリティレベルを把握し、段階的な改善計画を立てることから始めましょう。
WordPress制作では、テーマ選定やプラグイン選択の段階から対応を検討することが効率的です。
専門的な対応が必要な場合は、実績豊富な制作会社への相談も有効な選択肢となります。
継続的なサポート体制や運用ガイドラインの提供など、長期的な視点でのパートナー選びが重要です。
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